CORONARY-ARTERY

心筋梗塞・狭心症

CORONARY ARTERY

心臓に血液を供給する冠動脈が狭くなったり詰まったりして、血液の流れが悪くなる病気です。狭心症や心筋梗塞も冠動脈疾患に含まれます。
心臓は血液を全身に送り出す働きをもっており、生命を維持するには常に酸素と栄養が必要です。そのため冠動脈の血液の流れが悪くなると、十分な酸素と栄養が供給できなくなり心臓に障害が生じてしまいます。
特に心筋梗塞は日本人の3大死因の1つとなっているため、当院でも早期発見・早期治療に力を注いでいる病気の1つです。

心筋梗塞と狭心症の違い

  • 心筋梗塞

    冠動脈が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなることで、心筋(心臓の筋肉)に必要な酸素や栄養を供給できなくなり、心筋の一部の組織が壊死してしまう病気です。1度壊死した組織は元に戻らないため、早急な治療が必要になります。

  • 狭心症

    冠動脈の内側が狭くなって血液の流れが悪くなることで、心筋に十分な酸素や栄養が供給できなくなり、胸の痛みや圧迫感などが現れる病気です。狭心症を放置すると重篤な症状に進行するおそれがあるため、きちんと治療することが大切です。

心筋梗塞・狭心症は、動脈硬化が起因

心筋梗塞・狭心症の主な原因は動脈硬化です。動脈硬化とは、動脈(心臓から送り出される血液を全身に運ぶ)の血管が硬くなって弾性を損なった状態をいいます。血管は通常しなやかで弾性があるのですが、動脈硬化になると弾性が失われるだけでなく、血管内にプラークや血栓が生じてつまりやすくなってしまいます。
高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病があると、動脈硬化を発症するリスクが高くなるため注意しましょう。

MYOCARDIAL
INFARCTION

心筋梗塞は心臓の筋肉に血液を供給する血管(冠動脈)がつまり、心筋の一部が壊死してしまう病気です。
動脈硬化が進行して沈着していたプラーク(悪玉コレステロールなどが血管壁に付着してできたもの)の塊が破裂すると、血栓がつくられて冠動脈がつまってしまいます。冠動脈がつまると血流が途絶えて心筋に酸素や栄養が届けられなくなり、心筋の一部が壊死して重篤な症状を招いてしまいます。

心筋梗塞の前兆

日本人の3大死因である心筋梗塞は、発症者の約4割が死に至る疾患として知られています。心筋梗塞は入院する前に亡くなってしまう方が多いことも関係していますが、心筋梗塞で入院した場合の院内死亡率は1割以下にとどまっています。そのため、心筋梗塞を起こしたら速やかに救急車を呼び、AEDなどによる処置を迅速に行うことが重要です。
心筋梗塞は命に関わる病気なので、発症を予防することが大切です。心筋梗塞を発症する方の約半数には、発症する前に前兆が現れるといわれています。将来の心筋梗塞の発症を防ぐためにも、前兆が現れた段階で循環器内科を受診しましょう。
主な前兆には下記のような症状があります。これらの症状がある方はできるだけ早くご相談ください。

  • 胸や背中の痛み
  • 胸の圧迫感やしめつけ感
  • 胸やけや吐き気
  • 歯や顎、肩や腕の痛み

早期治療によって助かる確率が上がります

心筋梗塞は心筋が壊死してしまうため、命の危険を伴う病気です。また、心臓の機能低下によって後遺症を残すことも少なくありません。大切な命と健康を守るためにも、迅速な処置と入院治療によって早期に治療しましょう。
また、胸痛や肩こりなど心筋梗塞の前兆を見逃さないようにし、発作が起こる前に防ぐことも重要です。心筋梗塞は動脈硬化があると発症しやすくなるため、生活習慣を見直して発症リスクを下げるのも有効だといわれています。

心筋梗塞の治療

初期治療
医療機関に搬送されてから1番最初に行う治療を初期治療といい、必要な検査も並行して行います。循環器系の専門病院では、急性期の治療をCCU(冠動脈疾患集中治療室)で行います。
酸素吸入、静脈ラインの確保
はじめに酸素吸入を行います。それとともに鎖骨下静脈にカテーテルを挿入し、迅速に薬を投与できるよう静脈ラインを確保します。
胸の痛みのコントロール
胸の痛みが継続する場合には、モルヒネなどの鎮痛薬を静脈から注入します。痛みを抑えることで、心筋の酸素消費量を減らす効果も期待できます。
心筋の保護
薬を投与して心筋を保護します。心臓の負担を軽減するためにニトログリセリンを、心筋梗塞の範囲拡大を防ぎ、不整脈の発生を抑えるために交感神経ベータ遮断薬を投与します。
抗血栓治療
心筋梗塞の再発を抑えるために、抗血小板薬(アスピリンなど)を投与します。抗血小板薬には死亡率を下げる効果も期待できます。

ANGINA PECTORIS

心臓の筋肉に酸素や栄養を供給する血管(冠動脈)が細くなり、心筋に十分な酸素が供給されなくなる病気です。血流が阻害されることで心筋が酸素不足となり、胸の痛みなどが生じます。
冠動脈が細くなる主な原因には、冠動脈の動脈硬化、冠動脈の攣縮(血管がけいれんして収縮する)などがあります。また、子どものときにかかった川崎病の後遺症や、高安動脈炎(難病の炎症性疾患)が発症の原因になることもあります。

狭心症の種類

  • 安定狭心症

    安定狭心症(労作性狭心症)は階段を上ったときや重いものを持ったとき、精神的なストレスを受けたときなどに発症します。同じ量の運動をしたりストレスを受けたりしたときに、毎回発症するのが特徴です。
    運動をして必要な酸素量が増えているのに、細くなっている冠動脈では十分な供給ができず、胸痛や胸の圧迫感などが生じてしまいます。

  • 不安定狭心症

    不安定狭心症は運動をして体に負荷が多くかかったときだけでなく、軽い運動をしたときや安静にしているときにも発症することがあります。また、痛みが強くなったり回数が増えたりするなど、症状の現れ方も安定しません。
    安定狭心症の方に不安定狭心症のような症状が現れた場合、冠動脈の閉塞が急速に進んでいるおそれがあるため迅速に救急外来を受診してください。

  • 異型狭心症

    異型狭心症(冠攣縮性狭心症)は冠動脈が一時的に痙攣することで、胸痛や胸苦しさを生じます。夜間や昼間の安静時に発症することが多く、動脈硬化が進行していなくても発症することがあるといわれています。

狭心症の前兆

狭心症の主な前兆には胸の痛みや締めつけられるような圧迫感がありますが、安静にしていれば症状が治まることが多いため、そのまま放置してしまう方も少なくありません。しかし、狭心症を放置していると重篤な症状に進行するおそれがあるため、きちんと治療することをおすすめします。
胸に軽い痛みや違和感のある方、過去に胸が締めつけられるような痛みや圧迫感があった方は、医師にご相談ください。

狭心症の治療

薬物療法
狭心症の種類や症状に合わせてさまざまな薬を使用します。主に使用する薬には、発作時の症状を抑えるニトログリセリン、血栓ができるのを防ぐアスピリン、動脈硬化を改善するスタチン、狭心症の症状を予防するβ遮断薬・カルシウム拮抗薬・硝酸薬などがあります。
カテーテル治療
手首や足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、狭くなった冠動脈を広げるカテーテル治療を行うことがあります。カテーテルの先端についているバルーンによって冠動脈を広げたり、冠動脈にステントを留置したりします。カテーテル治療が必要な場合には、適切な病院をご紹介させていただきます。

動脈硬化がもたらす
その他の病気

  • 脳出血

    脳出血は脳の細い血管が何らかの原因で破れ、脳の中に出血する病気です。脳血管疾患(脳卒中)の1つで、前兆がほとんどなく突然発症するのが特徴です。脳内に出血した血液が血種(血のかたまり)をつくって脳を圧迫したり、脳にむくみが生じたりすることで、脳の組織がダメージを受けてしまいます。出血部位や出血量によっては命に関わるため、早急な治療が必要です。また、発症の予防や発症後のリハビリテーションも重要になります。

  • 脳梗塞

    脳梗塞は脳の血管がつまって血流が悪くなることで、酸素や栄養が供給できず脳細胞が壊死してしまう病気です。壊死した脳細胞が元に戻ることはないため、大きな発作を起こすと言語障害や麻痺などの後遺症が残ってしまうことが少なくありません。後遺症の改善には、早期の治療とリハビリテーションが重要です。また、MRIなどの検査によって、大きな脳梗塞の発作が起きる兆候を発見できるといわれています。

  • 下肢閉塞性動脈硬化症

    下肢の動脈が動脈硬化によってつまったり狭くなったりすることで、下肢の血流が悪くなってしまう病気です。血流が阻害されると筋肉や皮膚などに酸素や栄養が供給できなくなるため、足の裏やふくらはぎなどに痛みが生じてしまいます。
    下肢閉塞性動脈硬化症は動脈硬化が主な原因となっているため、生活習慣を見直して動脈硬化を予防・改善することが大切です。

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