DIALYSIS_TREATMENT
透析治療とは?
DIALYSIS 透析治療について
透析治療は、腎臓の働きが低下してしまった際に腎臓の代わりをする治療です。腎臓は、血液をキレイにしたり(身体にたまる老廃物を取り除く)、余分な水分を排泄したりするために血液をろ過して尿をつくる臓器です。また、血液を作るために必要なホルモンを分泌したり、ビタミンDを活性化して、腸からカルシウムの吸収を促進することもしています。
腎臓が弱くなる原因は様々ですが、糖尿病や慢性腎炎、腎硬化症(高血圧や尿酸値が高いことによるもの)、血管炎、多発性嚢胞腎(遺伝性の病気)などが挙げられます。腎臓が悪くなると、倦怠感が出現したり、老廃物が身体にたまり気分が悪くなって食事が摂れなくなったり、身体に水分がたまって浮腫みが出たり肺に水がたまって息苦しくなったり、貧血が進行したり、電解質のバランスが悪くなったりします。透析治療が必要な状態であることを放置すると、危ない不整脈が出現したり、心不全を発症したりして、場合によっては命に関わったりすることもあります。
「透析」で血液をきれいにする仕組み
血液透析は、いったん体から血液を取り出して「きれいにして」体に戻す治療です。血液をきれいにするのは、ダイアライザーという装置の中を通ることによって行われます。ダイアライザーの中で、血液が透析膜という膜を隔てて透析液と接することできれいになります。
透析膜は、水分や小さな物質(クレアチニン、尿素、ナトリウムやカリウムなど)を通すことができます。この原理を「拡散」と言って、濃度の高い方から低い方へと物質が移動します。つまり、ダイアライザーの中の透析膜を通して、透析液に体に溜まった物質を透析液に排泄して、必要なものを血液に取り込むようにするのです。この原理がしっかり働くように透析液は調整されています。
透析液は血液から除去したい物質の濃度を低くして、逆に体に補いたい物質を高くするように調整されているののです。透析液と血液が広い面積で接するように、ダイアライザーは透析膜で作られた細いチューブがたくさんあり、そのチューブの中を血液が通過し、チューブの周りを透析液が流れる構造になっています。
透析の種類
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血液透析
血液透析は、個人差はありますが1回が約4時間で、週3日間通院することにになります。透析の時間が短いと、どうしても血液を十分にはきれいにすることができません。また、週1回や2回であると、水分の調整や電解質バランスの乱れなどによる不整脈など身体への負担や場合によっては命の危険が起こることが懸念されます。患者様によって、必要な透析の時間は違うので、年齢・体格・食事量などを考慮して慎重に透析の時間は決定する必要があります。
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腹膜透析
お腹の中に透析液を入れ、腹膜(お腹の内臓を覆っている膜)を介して体内の老廃物や塩分、余分な水分を取り除いて血液をきれいに浄化する治療法です。
腹膜透析は自宅で行える透析治療なので、在宅での作業が主になります。注入・貯留・排液を1日4回ほど、主に在宅で行います。1回の交換には30分ほどかかりますが、慣れてくるともう少し短時間で交換できるようになることも多いようです。
腹膜透析には夜間の就寝中に、透析液の交換を機械が自動的に行うAPDという方法もあります。就寝中の時間を利用することで透析効率を上げ、日中の自由な時間を確保できるようになります。
透析治療が始まってから注意すること
01 水分・塩分制限
塩分と水分をたくさん摂取してしまうと、身体に水分がたまり浮腫み、血圧上昇、場合によっては心不全を引き起こしてしまいます。透析は週3回行いますが、透析の度ごとにたくさんの水分が蓄積していれば、そのぶんだけ水分をたくさん引かないといけなくなります。短時間でたくさんの水分を引くと血圧が低下するリスクが出てしまうので、状況によっては透析時間を延長して水分を引く必要も出てきます。心臓の機能が弱っている場合は、心不全を起こすリスクが高いため特に水分・塩分制限が大切になります。
水分を控えるコツとしては、大きなコップを使わずに小さいコップで少しずつ水分を摂取するということです。アルコールも水分ですので、アルコールの飲み過ぎにも注意して下さい。塩分制限も非常に重要です。塩辛い梅干し、塩辛などを食べないようにする・ラーメンやうどんの汁は飲まないようにする・醤油は減塩のものを使用してポン酢で代用できるものはポン酢を使用する・味噌汁はダシをしっかりとって具沢山にして味噌の量をなるべく減らすなどして下さい。1日の塩分を6g未満にするように目指して下さい。
02 ミネラルバランスを整える
腎臓の機能が低下すると、リンやカルシウムの調整が上手くとれなくなります。これを放置すると、血管が石灰化(硬い骨のような成分が沈着すること)し、心筋梗塞・脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こすリスクが上昇してしまいます。腎臓病によるミネラルバランスが崩れることをCKD-MBDといい、透析を受けている患者様が長く元気で生活するためにはCKD-MBDをしっかり管理することが重要です。腎臓が弱るとリンが排泄できなくなるのでリンが身体に溜まりやすい状態になるので、まず大切なのはリンの摂取を制限することです。リンが高くなると、血管が石灰化(骨のような硬い成分が沈着すること)して、心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクが上昇してしまいます。
03 カリウム制限
腎臓の機能が低下すると、カリウムを尿とともに排泄する力が低下します。このことから腎機能が低下した状態で、カリウムをたくさん摂取すると血液中のカリウムの濃度が高くなってしまいます。カリウムが上昇すると、しびれ・脱力感・時には危ない不整脈を引き起こし命にかかわる状態になることもあります。カリウムは透析で低下しますが、透析までの間にカリウムが上昇しないように注意する必要があります。カリウムは生野菜や果物、芋類などに多く含まれます。
1日の摂取量の目安は2000mg以下です。まずはどのような食材にカリウムが多く含まれるのかを把握することが大切です。また、生野菜であれば前もって水にさらすとカリウムを下げることができます。また、野菜を湯がいて茹で汁を捨てることでもカリウムの摂取を抑えることができます。カリウムをたくさん含む食材を控えること、調理方法を工夫することでカリウムを調整することが大切です。
04 シャントを大切にする
シャントは、透析をきちんと行うために非常に大切です。シャントを大切にしないと、詰まってしまって緊急でカテーテル手術をおこなったり、再び別のところにシャントの手術をやり直したりする必要性がでてきます。手さげカバンをシャントの腕にかける、シャントのあるほうで血圧を測る、シャントの腕を腕枕にするなどシャントを圧迫するようなことをすると閉塞してしまうリスクがあるので注意が必要です。また、シャントが感染しないようにシャントを清潔に保つことも大切です。かゆみがあってシャントの周りを強く掻いてしまわないようにかゆみのコントロールをすることも大切です。
05 しっかり食べてしっかり運動をする
透析が始まって体調が安定してきたら、運動をぜひ行っていただく必要があります。運動は様々な良い効果があることがわかっており、透析を受けていても問題なく行うことができます。ウォーキング・軽いジョギング・ラジオ体操などの体操などが勧められます。運動を行うことで、筋力が維持できる・ストレスの解消・便通の改善・骨粗鬆症の予防・心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化の病気の予防など様々あります。筋力がしっかりあると、透析中に血圧が安定することにもつながりますし、寝たきりの予防にもなります。このように運動にはとても良い効果があるので、ぜひ生活に取り入れていただきたいと思います。筋力を維持するためには、運動だけではなく食事も大切です。タンパク質や炭水化物などしっかり摂取することが大切です。十分なカロリーを摂取しないと、筋肉が分解されてエネルギーに使われてしまうことになります。しっかり食べて、しっかり運動することが大切です。
透析が十分にできているかの判断は?
毎回の透析治療で、血液を十分にきれいにすることが大切です。十分な透析が行えていないと、将来の身体の不調をきたすことになってしまいます。透析を受ける患者様には、それぞれ体格や食事の量・質に個人差があるため、透析にもとめられる「血液をきれいにする力」は患者様それぞれ違うことになります。そのため、透析の条件を患者様それぞれに合ったものにすることが大切です。透析で血液を綺麗にする力を上げるためには、透析の時間、透析で回す血液の量をアップする、ダイアライザーの変更などが挙げられます。適正な透析の設定にできているかどうかを判断するための指標が、「標準化透析量 Kt/V」という指標で、この数値が1.4以上なっていることを目標に透析の条件を設定することが望ましいとされています。
貧血に対する調整
腎臓の機能が低下している場合、血液を作るためのホルモン(エリスロポエチン)が低下します。エリスロポエチンは、腎臓から分泌されるホルモンであるため腎臓の機能が低下するとエリスロポエチンが低下してしまいます。エリスロポエチンが低下することで貧血になることを「腎性貧血」と言います。透析の時に、エリスロポエチン製剤を投与することで貧血に対する治療を行います。また、鉄分が不足して貧血になる場合を「鉄欠乏性貧血」と言いますが、鉄分が不足するとエリスロポエチン製剤を投与しても貧血の改善が得られません。採血で、「フェリチン(鉄の貯金)」や「TSAT」などをチェックして、鉄分が不足している場合は、鉄分のお薬や注射剤で鉄の補充を行うことが必要です。
ドライウェイトの設定方法
透析の時に、水分をどのくらい除去するのかを決定しますがそれを決定するためにドライウェイトを設定します。ドライウェイトは適正体重のことで、透析から透析の間で増えた体重の多くは身体に貯まった水分なので、透析前に測った体重からドライウェイトを引いた体重分を透析で除去することになります。
透析をうけている方の死因の第一位は「心不全」です。ドライウェイトを誤って高めに設定してしまうと、身体に水分が蓄積して「心不全」を発症して呼吸困難や浮腫を引き起こし、場合によっては命に関わる事態にもなりえます。つまりドライウェイトは非常に重要な指標で、慎重に決定する必要があります。
ドライウェイトを決定するのに参考にするのは、血圧・脈拍・身体の浮腫み・胸部レントゲン(CTRという心臓の大きさの指標)・採血項目(BNP)・心臓超音波検査 など様々な情報をもとに決定します。あまりドライウェイトを低く設定すると、透析で血圧低下をきたしますし、逆に高く設定すると先ほど説明したとおり心不全のリスクが高くなってしまいます。
オンラインHDFについて
血液透析(HD)は、「拡散」という原理を用いて血液の浄化を行います。HDは小さな分子については効率よく除去することができますが、もう少し大きな分子(β2ミクログロブリンなど)の除去が苦手です。このβ2ミクログロブリンは透析アミロイド症の原因となる物質で、この物質の除去をしっかり行うことを目的として「濾過」の原理を組み込んだ治療法が「オンラインHDF」です。オンラインHDFを行うためには、非常に管理された「超純粋透析液」が必要となります。オンラインHDFを使用することで、生存率の改善や、皮膚のかゆみ、透析中の血圧低下、貧血の改善などが期待できると報告されています。
HDFとは
HDF(血液透析濾過)は、血液透析(HD)と血液濾過(HF)を組み合わせた治療法です。
HDは物質が濃度の高いところから低いところに移動する働きを利用した治療法で、拡散減少の起こりやすい分子量の小さいもの、リンやカリウムなどの電解質、尿素などを取り除くのに優れています。しかし、拡散減少が緩やかな分子量の大きいものを取り除くのが難しいというデメリットもあります。
HFはダイアライザーで血液を濾過して、同量の補充液を血液回路から補充する治療法です。血液に引っ張る力を加え、血液中の物質や水分を取り除きます。HFは比較的大きな物質を取り除くのに優れていますが、電解質や尿毒素などの小さな物質を取り除くのが難しいというデメリットがあります。
HDFはHDとHF両方の特性を活かし、効率よく治療できる方法です。
オンラインとオフライン
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オンライン
置換液が透析液供給ラインと接続されており、オンライン補充液(透析液からつくられるオンライン調整透析液)を置換液として使用します。体内に注入するため、より厳重な水質管理が必要です。自施設でつくられた置換液が使用できるため、前希釈で多くの補液と除水による物質除去が行えるというメリットもあります。
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オフライン
ボトルやバッグに入っている置換液(薬価収載されている濾過型人工腎臓用補液など)が、透析液供給ラインに接続されず切り離されているもの。
当院はオンラインHDFを導入しています
当院は、20台の装置によって血液透析濾過法(Online-HDF)を行っています。血液透析濾過法は透析液を清浄化して補充液とすることで、従来の血液透析よりも毒素を効率よく除去できるようになっています。
また、装置が自動化(プライミング・脱血・返血・緊急補液の補助など)されることで、透析業務を省力化してより患者様のケアに注力することが可能となりました。血圧低下、気分不良、関節痛、皮膚のかゆみなど透析患者様が悩まされることの多い症状の、改善や予防も期待できます。
多様化する治療ニーズにお応えできるよう、また患者様により良い医療と看護をご提供できるよう血液透析濾過法の体制を整えております。
オンラインHDFのメリット
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Merit 01
普通の透析で取り切れない
老廃物の除去透析アミロイドーシスの原因といわれているβ2マイクログロブリンをはじめ、さまざまな種類の小分子蛋白質の除去効率が上がります。それにより、心臓など各臓器のアミロイド沈着、破壊性脊椎炎、手根管症候群などの合併症を予防する効果も期待できます。
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Merit 02
透析中の血圧の安定
HDFは血圧を安定させるのに役立つといわれています。HDFを行うことで透析中に血圧が下がりにくくなるため、落ち着いて除水できるようになることが期待できます。また、透析中に血圧が下がりやすい方に対して、血圧の維持を目的として行う場合もあります。
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Merit 03
普段の血圧の安定
HDFをはじめると、透析中だけでなく普段の血圧も落ち着いていくことがあります。人によっては、血圧のお薬を減らしていける方もいらっしゃいます。
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Merit 04
貧血の改善
HDFは貧血の改善にも役立つといわれています。貧血の治療として鉄材やEPOの注射を透析のたびにすることが多いのですが、HDFを行うことでEPOの注射の量を減らせることもあります。
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Merit 05
食欲の改善
HDFは不要な老廃物をしっかり除去できるため、体調がよくなり食欲がアップする方も多いといわれています。それにより食事量が増えると、リンなどの値が高くなるおそれもあるため食事管理が大切です。
患者様が安心安全に
気持ちよく
透析治療を
受けられる環境づくり
患者様が人工透析中に寒い、暑いなど不快に感じないよう、過ごしやすい室温になるよう調節しています。また、患者様に直接風が当たらないよう、空気の吹き出し口もふんわりするよう整えています。
さらに、長時間の透析中も腰に負担がかからないようにフランスベッド社製の電動ベッドを導入しています。そのほかにも各ベッドには、テレビを設置したり、Wi-Fiを設置したりと、透析中も患者様が快適に過ごせるような環境づくりに努めております。